マンガ「水木しげるの遠野物語」

民俗学好き+水木しげるの絵が好きな私としては、見逃す訳にはいかないのが「水木しげるの遠野物語」。日本における民俗学の創始者とも言われる柳田國男の「遠野物語」を、魑魅魍魎を唯一無二の筆致で描く水木しげるがついにマンガ化してくれました。粘菌の研究と破天荒な生き方が有名な南方熊楠の独特な人間像をマンガ化した猫楠ー南方熊楠の生涯も良かったので、問答無用で購入とあいなりました。

遠野は岩手県の中南部、海からなら釜石から西へ、陸からなら花巻から東へ入ることになります。山は深く、しかも盆地になっているという陸の孤島のような土地で語られる豊かな伝承を本にまとめたものが遠野物語です。そんなお話を水木しげるが絵にして、面白くないはずがありません。個人的には「ちょっとページ数が足りないのではないか?」と思えるほど駆け足な場面が見られたりもしましたが、大満足でございます。

最後に、遠野物語の中からいくつかのお話をちょっとだけご紹介。こんな不思議なお話が東北に今も語り継がれているんです。

  • 松崎村の寒戸というところで、梨の木の下に草履だけを残し、ある娘が行方知れずになってしまった。三十年後、その娘の家で親戚一同の集まりがあった風の強い夜、戸を叩く者がいる。戸を開くと、年老いた女が立っていて、わしは三十年前に去ったこの家の娘じゃ、と言う。その場にいた者はおののきつつも中へ招き入れるが・・・。
  • あるところに農夫とその娘が一頭の馬を飼いながら住んでいた。娘は美しかった。娘は馬を愛し、夜は厩で寝るようになり、ついには馬と夫婦になってしまった。激昂した農夫は馬を桑の木に縛り上げ、首を落として殺してしまった。娘はその首に抱きついて涙したが、すると・・・。
  • 土淵村の助役の弟・副二は、海辺の「田の浜」という土地へ婿へ行ったが、大津波に遭い妻と子を失った。生き残った子と小屋を立てて暮らしていたが、ある夜用を足そうと波打ち際を歩いている時に二人の人影を見つける。それは死んだ女房と、同じく津波で死んだ里の男だった。副二は婿に入る前に女房が別の男と心と通わせていたことを思い出し尋ねると、「今はこの人と夫婦だ」と女房は言う。そんなバカな、子供が可愛くないのか!? と副二が問い詰めると・・・。

僕は民俗学とか文化人類学とか神話学とかといった類のお話を読む時に、必ず気にかけることがあります。「このお話は、なんで人間によって生み出されたのか、なぜ存在しなくてはならないのか?」。このひとつの問いだけで、大抵の物語は楽しく読めるので、オススメです。

何はともあれ、読みやすいマンガということで、一度読んでみてくださいな。ドントハレ。