地球にリボンを巻く

地球にリボンを巻く

地球の赤道に沿って、リボンを巻くことをイメージしてみてください。アフリカから海を渡って南米、太平洋からアジアへ。リボンは水に浮くし、濡れることはありません。丸い地球にピッタリと沿います。やっとリボンが一周したら、両端を程よく引っ張って、ピッタリ赤道を丸く取り囲むようにします。

これで地球がリボンで包めました。これが第一段階。今のリボンは、地球の円周の長さになっているはずですね。ちょうど地球一周分の長さ、途方もない距離、およそ40000キロメートルです。

次に、リボンの片方に1メートルだけさらにリボンを継ぎ足してから、リボンの両端を接着剤で繋ぎます。この時のリボンの長さは、当然…元々の地球の円周40000キロ+1メートル、となります。リボンは地球の円周よりほんの少しだけ長くなったわけです。

これで問題の準備は整いました。

先ほど地球にグルリと巻いて1メートルだけ付け足したリボンに沿って、たくさんの人を配置します。陸の上ならリボンのそばに立ち、海の上から船を並べてリボンに手をかけます。そして…みんなで一斉にリボンを持ち上げます。ここで問題。リボンは地面からどれぐらいの高さだけ、持ち上がるでしょう?

答え

先に種明かしをしますと、この問題、大抵の人は「たった1メートルのリボンを足したところで、1ミリも持ち上がらないんじゃないか?」と考えます。みごとに直感が外れます。さあ、答えは…約16センチメートル(正確には、「2π分の1」メートル)です。どうですか、そんなに持ち上がるの!?って驚かれませんでした?

と、ここまででも面白いのですが、この問題のスゴいところは別にあります。目の前にピンポン玉があるとして、先ほどの問題と同様にリボンをピンポン玉の直径の部分で巻くことを考えます。ピッタリ一周する長さのリボンで巻いたら(きっとものすごく短いリボンで済むでしょうね)、そのリボンにさっき地球でやったみたいに「リボンを1メートル足して」みてください。そして、やっぱりこれも地球の時と同様に、リボンをピンポン玉から引き離すようにみんなで引っ張ってみると、リボンはピンポン玉からどれぐらい離れるでしょうか?

答えは「リボンは約16センチメートル持ち上がる」。さっき地球でやった実験とまったく同じ値です。小さな球であるピンポン玉でやっても、巨大な球である地球でやっても、持ち上がる距離は変わらないんですね。もっと小さなパチンコ玉でやっても、もっと大きな太陽でやっても、結果は同じ「約16センチメートル」になります。

ちなみに方程式を立てると、こうなります。(訳が分からない人は読み飛ばしてOKです)

  1. 地球やピンポン玉の直径をR、持ち上がる距離をx、円周率をπとします。
  2. 球の周の長さは、直径×円周率=πRとなります。もともと地球に巻いたリボンの長さですね。
  3. それに1メートル足したんだから、足したリボンの長さはπR+1メートルですね。
  4. 次に、持ち上げた時。直径はR+2xになります。円の両端にxが加わっているので、2xです。
  5. この時の球の周の長さは、円周率を掛けてπ(R+2x)となります。
  6. これらが等しいのですから、方程式は・・・πR+1=π(R+2x)となりますね。
  7. これをxについて解くと、x=1/2πとなります。

答えからRが消えて、どんな直径の球でも等しく約16センチメートル持ち上がることが分かりますね。というわけで、直感がズレた方(僕もズレました)、そのズレを楽しんでいただけましたでしょうか? ある企画について話を聞いた時に直感的に「うわ、これダメだ、面白くもないし売れそうにも思えない」なんて思えた時でも、実は脳みそが強固に思い込んでいるだけで、よくよく考えてみるとアリかも…?なんて、ままあるものです。直感は味方でも敵でもある、というのが企画屋としての感覚です。