私信入り書評『いちばんやさしいビジネスモデルの教本』

元ボクサーで、ご自身で何度も起業経験があり、はたまたかつてはコンサルティングの最大手の企業さんで辣腕を振るっていたり、内閣府さんや産業革新機構さんで委員をやっていたり。そして、莫大な数の起業案件を実際に本当に助けている(実はただ見てるだけの人が多い中)。

でも、結局のところ、ひたすらにやさしい人だって思います、山口さんって。タイトルの「いちばんやさしい」という表現も、山口さんが書かれたこの本については、 easy と kind のダブルミーニングです。

この本、徹頭徹尾、ビジネスモデルって何? わからない、不安だ、怖い…という人でもスイスイ読めるように書かれています。起業を63のちいさなテーマに小分けにして、やさしく説明してくれます。

「ビジネスモデルを作る」という行為に関係するすべての人の気持ちを考えながら書かれているところも、妙に心に残ります。どんな立場の人でも素直に読めるような語り口なんです。まるで「起業に関係する人たちに、悪い人はいない」とでも言うかのように。

しかし…僕は発見しましたよ。この本で一箇所だけ、山口さんが毒を吐いているところがあるんです。それは本の最終盤、最後のコラム中の一文です。

新規事業の作り方を知らない人ほど「撤退基準」という言葉を軽々しく使いたがります。

新しい事業に挑戦する時、ピボットはつきもの。抽象度を上げて言えば、新しいことをする時に、失敗はつきもの。一回の失敗で烙印を押さず、何度でも立ち上がることを期待すべきではないか。

要は、山口さんは怒っているんだと思います。この本で一箇所だけ、しかもこの本の読者ではなく、未来、この本の読者に対して失敗の烙印を押すかもしれない人に対して。

つまり、この本は、そういう本です。心の中に不安と希望を抱いている人にとってのバリアのような、やさしい本です。まるで山口さんのような本なんです。

といっても、それだけこの本はやさしい…というところでこの本の書評を終わるのは片手落ちで、無料特典のpdfが凄まじいので、こちらもひとこと。

率直に申し上げて、本よりも情報が多く、かつ高解像度です。もはや、ばかばかしくなってしまうぐらいです。起業という行為を4つの期・10のステージ・21の細かなステップに分け、それぞれのタイミングでの勘所を網羅的に描ききっています。

読んでいると、まるで「どこまでもついていくよ」と山口さんに言われているような気がしてきます。どれだけ不安だろうが、希望さえ持っていさえすれば大丈夫だから、と。

ご自身で起業し、無数の起業の現場で走り続けているからこそ、生業を起こすという体験が持っている本質的な価値を山口さんは知っているんだと思います。そして、その本質的な部分で共感したがっている。世界を変えたがっているし、よろこびたがっているんだろうなぁ、と。だからこそ、この本は起業という商売についての本であるにも関わらず、妙にあたたかいオーラを帯びているんだろうと思います。